Message from heaven...?
『Last story』

 

二つの選択肢、、、
修一を助けに行くか、それともパラディンさんのもとに隠れているか
しかし、美由の答える道はもちろん・・・・

「私、修一を助けにいく」
「!」
「でも、今助けにいったからといって、必ず助かるわけじゃ・・・」
亜矢がそこまで言いかけたとき、美由が叫んだ
「修一は亜矢の彼氏でしょう!?あなたが見捨ててどうするのよ!」
なんだか亜矢は、亜矢らしくない。
前まではこんなんじゃなかった。
「そう・・・だよね、私が見捨てちゃったら・・・」
「行こう、いっしょに」
美由が亜矢に手を差し伸べる。
そして亜矢がその手を握ろうとしたが、二人は手を握り合う事ができなかった。


ブォンブォンブォーーン
激しい音を立てながら喫茶店シルバーへ向かう一人のヘビメタ野郎と1人の少女、そして1人の幽霊
はたから見て、なんだかよくわからない組み合わせ、というか見た人は1人残らず腰をぬかした(亜矢のせい)
キキィッ
目の前に見える「喫茶シルバー」という看板の文字。
しかし美由には「魔王城シルバー」と見えていた。
そんなことどうでもいいのだが
カランカラン
シルバーの店のドアが開き、扉のベルが鳴る。
勇樹だ。
「おや、美由ちゃん、戻ってきたんだね」
勇樹は、さっきのパラディンさんの話が嘘かのようなほど、さわやかに笑ってみせた。
今の今まで緊張の糸の張り詰めていた美由は拍子抜けし、かわりに亜矢が勇樹に言った。
「あの、修一・・・・。修一は何処?」
「修一君かい?もう帰ったよ?」
勇樹はにっこりわらってそういった。
「まあ、入ってお茶でも」
美由とパラディンと亜矢は勇樹の招くままに喫茶店へはいる。
そしてそこは、美由には見慣れた。いつもお茶を飲んでいる空間だ。
美由がいつもの席にかけると、パラディン、亜矢と続いて美由をはさむように席についた。
コポコポコポ
いつものように、勇樹のコーヒーをカップに入れる音がし、コーヒー豆のいい香りが辺りに広がる。
「どういうつもりだっ!」
バキィッ!!
凄い音がしてカウンターテーブルが割れる。
パラディンがカウンターに手を打ち付けたのだ。
三人がそろってその砕けた部分に目をやる
(すごい力だな・・・・・)
「本当にコーヒーを出しやがるとはっ!修一くんをどこへやったんだっ!!」
パラディンが凄い形相で勇樹を怒鳴りつける。
「いやだなぁ、さっき家に帰ったっていったじゃないか」
コトリ、コトリ。
そういうと勇樹は美由とパラディンの前にコーヒーをだした。
さすがに亜矢は、姿が見えるからといってコーヒーは飲めない。
(うぅ・・・私もコーヒー飲みたい・・・・)
「最初はね、美由ちゃんの力に、興味があったさ。今も興味が無いといったら嘘になる。」
「・・・・」
「・・・・」
「それに、亜矢ちゃんを殺したのは僕じゃあないしね」
そういうと勇樹は自分用に入れたコーヒーを一口すすった。
(あぁ・・・コーヒー)
しかし亜矢は勇樹の話などどうでもよく、コーヒーのことで頭がいっぱいだった。
「俺はあの時、必死にトラックの進む先をそらそうとしていたんだ。亜矢ちゃんにあたらないように・・・ね。おそらくパラディンさん。あなたはそれを見間違えたんだ。」
「な・・・・」
パラディンは相当驚いたようだ。
コーヒーのカップを持った手は振るえ、カタカタと音をたてている。
否、驚いたというより、もしかしたら勇樹の話を信じてはいないだろう。
「亜矢ちゃんもおそらく、死んだときに霊体となり、私の放った「気」が見え、そう勘違いしたんだと思うよ」
勇樹は自分のカップの中のコーヒーを一気に飲み干した
「じゃぁ俺に向かってきたあの車は何だ!」
「多分。偶然だろう。信じないのは君らの勝手だけどね」
勇樹はそういうと、また、さわやかな笑顔を見せた。
「あのー、お話中悪いんですけど・・・・・状況がわかりませー・・・ん」
コーヒーを飲みつつ、二人の話をきいていた美由が右手をちょいっとあげ言った。
「まあ、気にしないで。修一君も無事だし、僕も敵じゃあない。そんなに思ったより複雑じゃあないさ」
勇樹はパラディンが険しい表情をしているのを横に、ほにゃらけた顔をしている。
「でも死んだ人間が本当に「霊」になるとは思わなかったなぁ」
勇樹はそういうと、亜矢の顔をのぞきこんだ。
亜矢は「コーヒー、コーヒー」とぶつぶつ小さい声で呟いている。
しかし、顔を覗き込まれたことに気付くと不機嫌そうに
「なんですか・・・・」
と勇樹に言った。
「いやいや、なんでもない。」
このままじゃあ殴られる、と判断した勇樹は即座に首を引っ込める。
「それでは、今日は解散にして、修一君の家にいって、彼が無事だという事を確かめてきてくださいよ、そうすれば私が無実だという事がわかるだろう?」
「あぁ、そうさせていただく」
勇樹がそういうと、パラディンが不機嫌そうに答えた。


ピンポーン
修一の家のチャイムが鳴る。
ドキドキ・・・ドキドキ・・・
美由と亜矢の胸は高鳴りっぱなしだ。
美由は修一が無事かどうか・・・
そして亜矢は修一に「会える」と言う事で・・・・
ちなみにパラディンは喫茶店のほうで勇樹の監視、待機中だ。
がちゃり
ノブのまわる音がして、ドアが開く。
「あら、美由ちゃんじゃない、」
しかし、出てきたのは修一のお母さんだった。
「修一なら部屋に居るけど、あがる?それとも呼んだほうがいいかな」
「あ、じゃあ、上がらせてもらいます」
そういうと美由はハッとした。
修一のお母さんには亜矢が見えてない・・・?
そう思い、美由が振り返ると亜矢の姿が無い。
「あれ・・・?」
「どうしたの?美由ちゃん」
「あ、いえ、なんでもないです。」


トットットットット
修一お母さんが居間へはいると、美由は玄関からまっすぐにある階段を上る。
すると、階段の上には腕組をした亜矢が待っていた。
「ほらっ、いくわよ」
亜矢はそういうと、美由のうしろについた。
美由はおそるおそる修一の部屋のドアを開ける。
修一のお母さんが部屋に居るっていっていた。
なので、ここに修一は居るはずだ。
わかってはいても、もしかしたらいないのではないかと、鼓動は高まるばかりだ。
ドクン、ドクン、ドクン、・・・・
「あ、美由。何処行ってたんだよ、急に飛び出して。俺あの後勇樹さんにわけわかんない話延々とされてこまったんだぞっ!」
ドアを開けると、修一が此方に歩きながらぷりぷりと言う。
「あれ?その後ろに居るのは・・・?」
そして、おもむろに美由の後ろの・・・・・
「!!」
修一は亜矢を見て言葉を失った。
一瞬、怖いものでも見たかのような顔をしたが、五秒もするとその顔は懐かしさ、嬉しさというようなものに変わった。
そして、次の瞬間修一は我に返って言った。
「あ・・・亜矢がどうして・・・・?」
すると、亜矢は美由の背中から出てきて、いままでのこと、色々な話をした。
自分がなぜ死んだのか、そして、何で今ここに居るのか。
美由とのメールの事。
長い、長い話だった。
まだ数ヶ月もたっていないというのに・・・。
修一も、もう何年も会っていなかったように、すごく懐かしそうに、静かに亜矢の話に耳をかたむけた。
(邪魔者は去ろう・・・・かな)
美由は静かに部屋を出た。

そして、その夜。美由は久しぶりに亜矢にメールを書いた。

「亜矢、勘違いなんかで、こっちの世界に呼び出しちゃってゴメンネ。
でも亜矢、久しぶりに修一に会えて、ほんとに、ほんとに良かったね!
私、途中で出てっちゃったけど、ちゃんとうまくいった?
それからね、私、勇樹さんがメールを偽造してたって言ってたけど、あのメールは亜矢のものだって信じる。
そして、このメールも亜矢に届くって信じてる。
だってそうでしょ?
はじめの頃のメールの、「クラスみんなからの手紙」、あの事知ってるの、私の学校の人だけだもん。
亜矢、また、明日も会えるかな?
会えたらいいね・・・」


―――――――――送信―――――――――――


−返事・・・・来るといいな・・・・―

ジリリリリリリ!!!!
ガッシャン!!!
目覚ましの音が鳴り響き、美由がそれをつかみ壁に投げつける。
「こらぁ!美由!今の何の音!?暴れてないで早く学校のしたくしなさーい!」
音が下まで聞こえたのか、二階に居ても目覚し時計よりもうるさく聞こえる母親の声が響く。
「はぁーい!!」
美由は投げやりに答えると、パソコンのスイッチを入れた。
ブーン
「めーるちぇくっ!」←口癖

――――――――――受信数1――――――題名〜美由へ〜――――――――――
(亜矢だ・・・・・!)

「美由、私、昨日は修一と話せて、凄く楽しかった!
それに、美由とも会って、話ができた!
なんか、前まで当たり前だった事が夢みたい。
それとね、メール、ちゃんと届いてたし、私も書いてた。
メールを読んでる時、書いてるとき、凄く楽しかったの覚えてる
それと、もう、修一にも言ったけど、私もう美由達とは会えないし、メールもこれで最後、いままで、ワガママにつき合わせちゃってごめんね。
死んじゃったのに、皆と会話したいって、贅沢すぎたよね
私今、すごく幸せだよ、
一度でもまた、美由や修一に会えてホントによかった!
ありがとう!」

"え・・・・ちょっとまってよ、もう会えない?メールも終わり?嫌だ・・・・嫌だよ・・・・"

美由は新規でメールを作成し、アドレスを打つと、急いで文章を書き始めた。

「ねぇ、亜矢、私また亜矢に会いたいよ。亜矢と話したいよ。
それがダメなら贅沢は言わないから。メールだけでいいからまた話そうよ」

――――――――送信―――――――――

#メールは、プロバイダに拒否されました。メールアドレスをもう一度ご確認ください

「!!」

美由は急いでメールアドレスを確認した。
今まで送ったものと、亜矢から来たメール。
どれをあてはめても間違っては居なかった。
そして、最後に、今来たメール・・・・・・・・
コレだけ、ほかのどのメールとも当てはまらない

「あれ・・・・・?これは・・・・メッセージフロム・・・・」

"Message from heaven"

「天国からの・・・・メール・・・?」

(じゃあ、亜矢は・・・・・・・・)


この日、美由は、亜矢がやり残したことを、全てやり遂げ、天国に行ったことを知り、すがすがしい気分で学校へ向かった。


オマケ

そして、忘れられているパラディンと勇樹は・・・・・・・・?

意気投合して、二人で酒を酌み交わし、酔いつぶれた後、今、まだ喫茶シルバーで寝ていた・・・・・。

モドル