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べナウル伝説第15話 〜後編〜

『peace』

「私はあなたを許さないわ!」
民衆の声はだんだん大きくなっていったが
私の耳にはほとんど入っていなかった。
一番尊敬し、愛していたはずなのに・・・・
今は一番憎んでいる・・・・悲しすぎる現実。
これは現実・・・・変えられることのできない運命・・・
私は、お父様を殺し国は・・・世界は平和になる。
壇上に一歩 、足を踏み入れるとまったく別の世界だった。
まだ息はあるが、お母様とわからないくらい
変わり果てた姿の女性・・・・
その姿が・・・あまりに醜くて、涙がでそうになった。
「お母様を開放して!おねがい!お父様はお母様を愛しているんでしょう!?」
私の、必死の叫びはクローディア・・・・お父様には届かなかった・・・・
「・・・・だれがこんな女を愛したものか・・・この女は私の計画を邪魔しようとした!裏切りものだ!」
頭の中が真っ白になった・・・・お父様はお母様を愛していなかった・・・?
じゃあ、私は・・・愛のないところへ生まれたというのだろうか?
「そんなの嘘よ!お父様はお母様を愛していたはずよ!思い出してよ!ねぇ!お父様!!」
涙が止まらない・・・誰か私を助けて・・・・
「うるさい!!黙れ!この計画が成功すれば・・・リナ、お前も幸せになれる!昔以上に・・・
だから2人でこの計画を成功させるんだ!」
フタリデ・・・・・・・・・・?シアワセ・・・・・?ムカシイジョウニ・・・・・・・・。
「そんなの・・・・そんなの偽物よ!!そんなの幸せなんかじゃない!ねぇ、誰も気づかないの!?
本当に・・・これでいいの?ねぇ!!誰かこたえてよお!!」
ダメだ・・・感情がコントロールできない・・・・
その時、お母様が何かを言っていることに気がついた・・・
「リナ・・・・・・もう、いいから・・・・お母さんは・・・もう・・・いいから
あなただけでも・・・ 幸せになりなさい・・・・・・・・・・。」
とても・・・とても小さな声だった・・・・・・そして・・・・
その言葉を最後に・・・・お母様は・・・・静かに、眠りました。
「いや・・・・お母様!お母様!!」
もう・・・それ以上言葉がでてこなかった。
ただ、これ以上お父様を好き勝手にさせるわけにはいかない。
私の中で、強く理解した。闇は、消えるべきものなのだと。
「私は、あなたを愛しています。そして一番尊敬していました。だからこそ許せない・・・・
私は、あなたを倒します。あなたを倒し、この国を元に戻します。元にもどらなくても、全ての人達が
少しでも幸せになれるようにします。」
私は、決心しそして短剣を引き抜いた。
「なっ!何やってるんだ!リナ!魔法をつかえ!死ぬつもりか!?自殺行為だ!やめろ!」
「アナフッド、みんな、ごめんなさい。魔法は使わない。私が、私の手で倒したいの・・・。お父様だけ 罪を着ているなんてつらいから、私も罪を着ておなじ過ちをもう二度と繰り返さないように・・・」
もう、それいじょうアナフッドは何もいわなかった。
そして、私は走り出した。全てを振り切るように・・・・
お父様めがけてナイフを振り下ろした・・・鈍い衝撃が体中につたわり、緋色の鮮血が
あたりいちめんにふりかかった・・・。
「!?どうして?どうして・・・逃げないの?殺されるとわかっているのに・・・!!」
自分で何をいっているのかわからなかった。
自分で刺したくせに・・・何をいっているのだろう・・・
お父様は敵。私は敵を刺した。これでいいはずなのに。何故かものすごい罪悪感が私を襲った。
クルシイ・・・・カナシイ・・・ツライ・・・・ これは誰の気持ち?
お父様の気持ちなの・・・?なんて辛い。お父様はずっとこんな気持ちだったのだろうか。
お父様は苦しそうに床に倒れこんだ。
そして、最後にこう残した・・・・。すまない・・・と。
お父様は、もう自分の罪の重さに気づいていたのかもしれない。
だけど、どうしても私を幸せにしたかった・・・・その言葉を聞いて
涙がとまらなかった。
泣いてばかりの私に、お父様が昔いってくれた言葉をおもいだした・・・。

『すまない・・・いつか、なんとしてでもお前を幸せにするから・・・』

お父様は、その言葉を必死にかなえようとしてくれた。
私は、今でもお父様を愛している・・・・・
奇跡の花・・・・・そんなものがあったからいけなかったんだ 。
そんなものがあったから、強い欲望をもつ者達がでてしまった。
私は、悲しみからたくさんの憎しみを生み出してしまった。
悲しみや、苦しみから生まれる優しさだってあるはずだ。
私は、それをつかみたかった。それが一番ほしかった。
たったひとりの人が幸せになるよりもたくさんの人が少しずつ幸せに
なる・・・・奇跡の花は、そんな願いはかなえてくれないのだろうか?
そんな願いは、欲張りなのだろうか?
私は、お父様の手から指輪をとり、自分の指輪と重ねた。

指輪は、小さく光り、消えてしまった・・・・。
何もおこらなかった・・・・・。
「なによ・・・・・願いなんてかなわないじゃない・・・・!
少しでいいのに・・・少しの幸せでいいのに!」
なんだかくやしかった。今まで一生懸命捜し求めていた
奇跡の花は なんの意味もなかった・・・・
「いや・・・・そうでもないみたいだな・・・・・。」
フールアが静かに微笑みながらそう言った。
今まで処刑場にいた民衆達は、
目を覚ましたように処刑場から去っていき
幸せそうに微笑んでいた。まるで、何もなかったように。
それを見ていると私も、何故か暖かい気持ちになっていた。
これが奇跡の花の力だとしたらすべての人が
富なんてなくても。名誉などなくても・・・
少しずつ、幸せになっていけるのだろうか。
「この国は・・・・元通りになるかしら?」
ふと、アナフッドたちにそう問いかけた。
「それは、リナ次第だな。これからはお前がこの国を支えていく女王なんだからな。」
私が・・・この国を支えていく・・・・。未来は、この国の未来は私次第でかわっていく。
この国が滅びたとしても、栄えたとしても
それは私次第だということだ。
「私に・・・・この国を支える事ができるかしら?みんなが幸せになれるかしら?」
アナフッドたちは、黙って力強く肯いた。
そして私は、また強く決心した。
この国を平和にしてみせる・・・と。
そして、確信した。
この国は平和になる・・・と。

いつかまた私がこの国に生まれたとき・・・
この国が笑顔であふれていますように。


14歳の女王、リナ・クロイスは
いつまでも祈っています・・・・・

THE*END.......